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トラブルを防ぐ産廃実務のツボ

廃棄物処理法の内容、運用方法を平易に解説

これって産廃?一廃?その①

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20種類の産業廃棄物のどれにも該当しない廃棄物であれば、それは一般廃棄物なのですが、個々の具体例を見ていくと時々どちらか迷ってしまうことがよくあります。

例えば廃棄物自体が単一物質であればまだしも、2種類以上の物質の集合体としての廃棄物は、どのように判断すべきでしょうか。

自治体によって判断の違いもありますので、最終的には自治体に確認することが必要ですが、判断に迷う事例をみてみましょう。

建設工事で出た『伐採木』『刈草』

造園工事や足場の設置・外構工事などの建設工事に伴って出た『伐採木や木枝』は「産業廃棄物の木くず」となります。

建設工事に伴って出た『刈草』は産業廃棄物の木くずには該当せず、「事業系一般廃棄物」です。

建設工事に伴って排出されていますから、排出事業者は「元請」ということになります。

植栽・剪定作業で出た『剪定枝』『刈草』

庭師植木の剪定や街路樹の枝払いなど、建設業に該当しない「園芸サービス業」としての植栽・剪定作業で出た剪定枝や刈草は、「一般廃棄物」に該当します。

植木屋さんが切るまでは廃棄物でなかった枝が、植木屋さんの剪定という事業活動によって枝が廃棄物として発生したと考えられますから、排出事業者は植木屋さんと言いたいのですが、一般廃棄物行政を管轄する全国の市町村のすべてがこのように判断しているとは限りません。

面倒ですが、市町村の廃棄物指導課に「剪定した枝木の排出事業者は誰ですか?」と必ず確認が必要です。

ちなみに当事務所のある神奈川県横浜市では、「枝木を剪定した時点で、剪定された枝木は植木屋さんのもの」と横浜市一般廃棄物指導課では定義しています。

植木屋さんは排出事業者ですから、自社運搬として一般廃棄物収集運搬業許可がなくても、横浜市の清掃工場や木くずのリサイクル工場に持ち込むことが可能です。

建築物の解体やリフォーム時の『残置物』

聞きなれない言葉ですが、「残置物」とは建築物を解体又はリフォームする際に、建築物の所有者が建築物内に残した不要品のことで、これが廃棄物であれば排出事業者は当然に建築物の所有者となります。

建設リサイクル法においては、事前調査の段階で残置物の有無の調査を行うこととなっており、残置物が建築物内に残されている場合には、発注者に対して事前に撤去するよう依頼することとされています。

残置物 (2)解体業者さんやリフォーム業者さんは、工事開始時には残置物が建物内部に残っていることの無いように、契約の時点で取り決めをする必要があります。

不要品で無い大事なものであれば、建築物の所有者が工事の前にきちんと撤去するでしょうから残置物になりませんが、不要品の場合、建築物の所有者としては、解体工事で出たがれき類などと一緒に解体業者さんに処分してもらおうと考えて、建築物内に放置しておくことがあります。

これを解体業者さんが安易に処理してしまうのは、ちょっと問題があります。

一般住宅の残置物は、すべてが『一般廃棄物』で、事務所、飲食店、工場などの残置物は、その性状によって『産業廃棄物』または『事業系一般廃棄物』に分類されます。

ですから、産業廃棄物収集運搬業許可を有する解体業者さんであっても、一般住宅のすべての残置物と、事務所等の残置物で『事業系一般廃棄物』にあたるものは、無許可営業ということで重い罰則の対象になりますので、建築物の所有者に対し速やかに撤去するよう求めてください。

それでも、建築物の所有者に残置物の撤去を求めたくても、何らかの理由で(倒産や夜逃げなど)それがかなわない場合もあるでしょう。

その場合は、残置物が明らかに「(事業系)一般廃棄物」の場合は、必ず工事業者さんが市町村の廃棄物指導課にコンタクトして、これら一般廃棄物の処理をどうするかを相談する必要があります。

相談を受けた市町村は、一般廃棄物処理計画に沿った処理方法(適切な排出方法、市町村が自ら処理しない廃棄物については連絡すべき一般廃棄物処理業者等)を示すことになっていますから、必ず的確なアドバイスをもらえるはずです。

火災現場の建築物の燃え殻

火災現場不幸にも火災によって建築物が半焼してしまい建築物を解体して更地にする場合、消失を免れた部分を解体した際の廃棄物は、解体工事の元請業者を排出責任者とする『産業廃棄物』に相当します。

それでは、すでに消失してしまった建築物の燃え殻はどうでしょう。

産業廃棄物の20品目のひとつにである「燃え殻」がピタリとあてはまると思いますが、実はそうではありません。

解体工事という事業活動を伴う前から存在するということで、通常は『一般廃棄物』として取り扱います。

ですから、火災現場の建築物の燃え殻は、残置物と同様な扱いを要求しているということになります。

神奈川県の見解はこのように「一般廃棄物」ですが、実際に請け負った火災現場の解体工事ごとに自治体の見解を確認する必要があります。

とは言っても、解体工事の現場で、厳密に一廃と産廃を区分して対応できるかは甚だ疑問が残るのですが。

道路側溝の堆積物

道路工事環境省の通知では、次のものは廃棄物処理法の対象となる廃棄物ではないと説明されています。

  1. 港湾、河川等のしゅんせつに伴って生ずる土砂その他これに類するもの
  2. 漁業活動に伴って漁網にかかった水産動植物等であって、当該漁業活動を行なった現場付近において排出したもの
  3. 土砂及び専ら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの

では、工場内の側溝や道路の側溝の堆積物も通常の土砂として扱ってよいかと判断に迷うところです。

この通知にある港湾、河川等で発生するしゅんせつ土砂は、埋立て用の有用物として実際に使われているという実態があり、発生現場で適宜移動するもので、廃棄物の概念にはなじみにくい性格を有していることから、運用上、廃棄物処理法の規制対象とはしないという取り扱いをしてきたものです。

一般的には、この考え方は工場内の側溝や道路の側溝にまで適用されるものではなく、道路側溝の堆積物を道路管理者が処理する場合と、町内会が清掃作業で処理する場合とで扱いが異なります。

道路管理者が行なう道路清掃によって排出された廃棄物は、道路管理者が行なう「道路の維持管理業務に伴って排出される事業系廃棄物」というとらえ方をしますので、堆積した泥状物は産業廃棄物の『汚泥』、木・草・落葉などは『事業系一般廃棄物』として扱い、排出事業者はいずれも「道路管理者」となります。

町内会の清掃作業の場合、泥状物であっても『一般廃棄物』として扱います。

泥状でないいわゆる土砂については、廃棄物処理法の対象外となりますが、工場の側溝などの土砂で有害物質を含有している場合は、産業廃棄物の『汚泥』として処理する必要があります。

ビルピット汚泥

浄化槽の清掃員ビルの地下にある厨房やトイレ等は、下水道管より低い位置にあるため、排水や汚水を自然流下で排水することができませんので、一時的に排水や汚水を「ビルピット」と呼ばれる排水槽(汚水槽・合併槽・雑排水槽・グリース阻集器など)に貯水し、これをポンプでくみ上げて下水道に排除しています。

汚水槽・合併槽などの清掃の際に発生するし尿混じりのビルピット汚泥は『一般廃棄物』であり、雑排水槽・グリース阻集器などの清掃の際発生するし尿を含まないビルピット汚泥は『産業廃棄物』に該当します。

いずれも排出事業者は、これらの排水処理設備を設置している事業者ですから、し尿を含むビルピット汚泥(一般廃棄物)とし尿を含まないビルピット汚泥(産業廃棄物)を同じ業者に委託する場合、その業者が一般廃棄物収集運搬業と産業廃棄物収集運搬業の両方の許可を有していることが必要です。

墓石

環境省は、「古い墓を除去して廃棄しようとする場合、廃棄物として取り扱ってよいか?」との質問に対し、以下のような通知を発出しています。

「墓は祖先の霊を埋葬・供養等してきた宗教的感情の対象であるので、宗教行為の一部として墓を除去し廃棄する場合、廃棄物として取り扱うことは適当でない。」

墓石を掃除する人つまり、「宗教的感情の対象」であるうちは廃棄物ではなく、墓の供養などを行なった後は、廃棄物として取り扱うと判断しています。

例えば、永代供養の場合、墓地から一度墓石が撤去され寺院等まで運搬が行われますが、墓石は撤去後も宗教行為の対象であり続けるため廃棄物には該当しないことになります。

一方、墓じまいを行う場合は、墓の供養を行ってから撤去・解体を行うことが一般的ですが、供養が完了した段階で墓石は宗教行為の対象でなくなると判断します。

石材業者等が供養後の墓石を撤去・解体を行う場合、墓石はその撤去・解体に伴って生じた『産業廃棄物(がれき類)』となります。

お寺から出されるお線香の灰

収集運搬業者さんにレアな質問です。

宗教法人である寺院から「お線香の灰を定期的に回収して適切に処分してほしい」と依頼を受けました。
どのような許可を取得していれば、この依頼を受けてもいいですか?

お線香の灰も墓石と同様に、「宗教的感情の対象」であるうちは廃棄物ではないと考えられますが、大きな寺院であれば定期的に一定量を廃棄物として処分する必要があるようです。

宗教法人も「事業活動」とみなされますから、お線香の灰も事業活動を通して排出された廃棄物となりますから、「事業系一般廃棄物」又は「産業廃棄物」のどちらかに該当することになりますが、さあどちらでしょうか?

神奈川県の産業廃棄物指導課と川崎市の廃棄物指導課に問い合わせたところ、どちらも「産業廃棄物の燃え殻」として処理してくださいという回答をいただきました。

寺院の事務方の担当者は、委託契約書を締結しマニフェストをきちんと運用しなければなりません。

判断に迷うケースはまだまだありますので、 これって産廃?一廃?その② のコラムに続きます。

任せなさい他社の依頼を受けて産業廃棄物を運搬する場合は、『産業廃棄物収集運搬業許可』が必要です。

産廃許可なら横浜市の産廃専門 Y&Y行政書士事務所に全部お任せ下さい!   

”総体として専ら物”はあり?

『総体として専ら物』は認められる?

廃棄物の処理業許可を取得せずに、主に鉄くずなどの回収をされているスクラップ業者さんから、先日次のような問い合わせがありました。

専ら4品目

  • 壊れて使い物にならない自転車を、専ら物の鉄くずとして無償で回収している。
  • 回収された自転車は、ペダルに使用されたプラスチックやタイヤのチューブなど、金属以外のものを手ばらしして部品として販売したり、売り物にならないものは産廃として処理している。そして残った金属部分を鉄くずとして販売している。
  • ヤードに突然の立入検査があり、行政から次のように指摘を受けた。
  • 『ヤードでペダルやタイヤを外すのは専ら物として認められないのでダメ。回収時点で自転車の持ち主がそれらを除外して金属になったものだけを回収すること。廃棄物となった網戸も樹脂製の網は持ち主に切り取ってもらって、アルミ枠だけを回収すること。』
  • 網戸の網ならまだしも、自転車のチューブをお客さんに外してとは言えないのだけど、どうしたらいいですか?

スクラップヤードで普通に行われている風景かと思われるのですが、相談者の方が「自転車を専ら物として回収している」と話したことに対し、専ら物という単語に行政が敏感に反応したからかもしれません。
(more…)

”専ら物”ってナニ?②

このコラムは”専ら物”ってナニ?①の続きです。

専ら物にもなぜか一廃と産廃の別がある

専ら4品目「専ら物イコール産廃」と思われている方がいますが、専ら物は廃棄物ですので、産業廃棄物にあたるものと一般廃棄物にあたるものの2種類があります。

処理業の許可もマニフェストの運用も不要なのであれば、わざわざ「一廃の専ら物」と「産廃の専ら物」を区別する意味がないのではと思われるかもしれませんが、以下の比較表を見てください。

「産廃の専ら物」についてのみやらなければならないことが、ひとつだけあるのです。

一般廃棄物 産業廃棄物
処理業の許可
(収集運搬業と処分業)
専ら業者の特例措置により不要 専ら業者の特例措置により不要
書面による委託契約 一廃なのでもともと不要 必要
マニフェストの運用 一廃なのでもともと不要 専ら業者の特例措置により不要

廃棄物処理法には、産業廃棄物については「委託契約書の運用は不要」という規定がないため、排出事業者が「産業廃棄物に該当する専ら物」を扱う専ら業者に委託する場合は、排出事業者と専ら業者との間で書面による委託契約が必要です。

このことはあまり知られていないので、もし知ってたという廃棄物担当者の方がいらっしゃったら、その方はたぶん相当に廃棄物オタクであると思われます。

委託契約書の詳細はこちら >>> 産廃の委託契約書

必ず”マテリアルリサイクル”されなければならない

専ら業者は「再生事業者(リサイクル事業者)」ですから、言うまでもなく必ず「マテリアルリサイクル」されることが大前提です。

専ら4品目 マテリアルリサイクルの例
古紙
(紙くず)
古紙パルプを使用した再生紙
コンクリート型枠、床材などの古紙ボード
セルロースファイバ(住宅用断熱材)
鶏卵用トレーなどのパルプモールド
古紙利用農業用マルチシート
古繊維
(繊維くず)
中古衣料
ウエス
自動車の内装材フェルト
建材(断熱材など)
作業用手袋(軍手)
クッションの中綿
くず鉄
(古銅等を含む
金属くず)
精錬により純度の高い金属を回収し再利用
空き瓶類
(ガラスくず)
ガラス原料の”カレット”
路盤材
セメントの再生骨材

リサイクル専ら物の処理の委託先が、焼却(熱回収含む)や埋め立てなど「再生利用(リサイクル)」に該当しない処分を行なった場合は、もはや専ら物でなく『廃棄物の処分』に該当することになり、廃棄物処理業の許可を持つ処理業者でなければ委託することができません。

専ら業者に処理料金を支払って4品目を委託する場合は、必ず引き取られた後の処理ルートもしっかり確認しておくことが必要です。

「産業廃棄物に該当する専ら物」に必要な委託契約書には、「受託業務終了報告」という法定記載事項があります。

通常の産業廃棄物では、この終了報告をマニフェストで代用していますが、専ら物ではマニフェストに代わる何らかの形で、排出事業者は専ら業者から終了報告をきちんと受ける必要があります。

専ら物は廃棄物なのですが、マニフェストの運用が不要なので専ら物を引き渡したら終わりと思いがちです。

専ら物が廃棄物である以上排出事業者の責任は免れませんので、信頼に足る事業者を選定するにあたっては、自治体から「再生事業者登録」を受けている業者を検討するのも一案です。

「再生事業者登録」の詳細はこちら >>> 再生事業者登録制度

なぜかしら4品目以外は「専ら物」にならない

前述のとおり、専ら物(もっぱらぶつ)は、廃棄物処理法制定当時からある以下のなじみの深い4種類の廃棄物のことです。

  1. 古紙 (紙くず)
  2. 古繊維 (繊維くず)
  3. くず鉄 (古銅等を含む金属くず)
  4. 空き瓶類 (ガラスくず)

「空き瓶が専ら物ならPETボトルだって同じでは・・・」と思いますが、残念ながらそうなっていません。
(more…)

”専ら物”ってナニ?①

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専ら物は”廃棄物”、有価物ではありません。

セミナーの冒頭で「これ、何と読むかお解りになる方?」とホワイトボードに「専ら物」と書いて参加者の方に振ってみますと、意外や意外、けっこう皆さんよくご存じです。

廃棄物の業務に少しでも関わったことがある人は、一度ぐらい耳にしたことがあると思いますが、「もっぱらぶつ」と読みます。

廃棄物処理法の条文に「専ら再生利用(リサイクル)の目的となる廃棄物」という記述があり、これをもじって「専ら物」と、そして専ら物を扱う業者さんを「専ら業者」と呼んでいるようです。

●専ら4品目(専らリサイクルの目的となる廃棄物のこと)
専ら4品目

専ら物(もっぱらぶつ)は、廃棄物処理法制定当時からある、以下のなじみの深い4種類の廃棄物のことで、「専ら再生利用(リサイクル)の目的となる廃棄物」を扱う事業者により、無償または処理費用を徴収して引き取られる物の略称です。

  1. 古紙 (紙くず)
  2. 古繊維 (繊維くず)
  3. くず鉄 (古銅等を含む。金属くず)
  4. 空き瓶類 (ガラスくず)

環境省が平成15年2月に「引越時に発生する廃棄物の取扱いについて」というマニュアルを発出していますが、そのマニュアルの中において専ら物について、『再生資源回収業者の手によって回収されてきている、古紙(紙くず)、くず鉄(古銅等を含む。金属くず)、空き瓶類(ガラスくず)及び古繊維(繊維くず)の4品目』という表記あるので、上記の個々の専ら物の括弧書き部分はこれをそのまま踏襲しています。

”アルミ”や”板ガラス”は専ら物?

「アルミは専ら物に該当しますか?」という質問をいただきますが、くず鉄は広く金属くずと解釈していますので「アルミくず」も専ら物に該当します。

「板ガラスも空き瓶類に該当しますか?」という質問もいただきますが、空き瓶類は広く”ガラスくず”と解釈していますので、「破損した板ガラス」であってもガラス原料のカレットや道路の路盤材等に再利用されるのであれば、これも立派な専ら物です。

専ら物を扱う事業者(専ら業者)の特例措置

昭和45年に廃棄物処理法が制定され、廃棄物の取扱いにいろいろな規制がかかったのですが、これら4品目については、大昔から問題なくリサイクルされてきたいわばリサイクルの優等生であるということと、多くの事業者が中小零細であるということから、専ら物を扱う事業者(専ら業者)に限って次の3つの特例措置がとられました。

●専ら業者の特例措置

  1. 処理業の許可(収集運搬業許可と処分業許可の両方)が不要
    ※廃棄物処理法第7条第1項・第6項(一廃)
    ※廃棄物処理法第14条第1項・第6項(産廃)
  2. マニフェストの運用が不要
    ※施行規則第8条の19第3項(管理票の交付を要しない場合)
  3. 許可業者に課される”処理基準”が適用されない
    ※廃棄物処理法第7条第13項(一廃)
    ※廃棄物処理法第14条第12項(産廃)

専ら業者の特例措置の根拠条文・通知

特例措置の根拠となる「廃棄物処理法第14条」と、専ら物の対象として4品目を具体例としてあげている「昭和46年に発出された厚生省環境衛生局長から各都道府県への通知(公布:昭和46年10月16日 環整43号)」を引用します。

専ら物の対象品目は廃棄物処理法の条文には記載がなく、半世紀ほど前に発出された昭和46年のこの通知(公布:昭和46年10月16日 環整43号)に列挙された4品目のみが専ら物であると解釈され、現在に至っています。

●廃棄物処理法 第14条第1項(産業廃棄物処理業)
産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。以下この条から第14条の3の3まで、第15条の4の2、第15条の4の3第3項及び第15条の4の4第3項において同じ。)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。

※廃棄物処理法第7条第1項(一般廃棄物処理業)の条文では、上記第14条の産業廃棄物の文言を一般廃棄物に読み替える内容となっています。

●通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について」(抜粋)公布:昭和46年10月16日 環整43号
 4 産業廃棄物処理業
  (1) 現在、事業者の委託を受けて産業廃棄物の処理を業としている者が存在するが、廃棄物の処理が必らずしも適正に実施されず、不法投棄等が頻発している実情にかんがみ、産業廃棄物の処理を業として行なおうとする者は、都道府県知事又は政令市市長の許可を受けなければならないものとしたこと。
  (2) 産業廃棄物の処理業者であっても、もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。

廃棄物を扱うのが専ら業者です

資源ごみマーク最近では全く見かけることがなくなりましたが、「古新聞、古雑誌をトイレットペーパーと交換します。」と言ってスピーカ付きの軽トラで回っていた「古紙回収業者」さんの場合は、「古紙」を価値の有るトイレットペーパと物々交換してくれる訳ですから、この「古紙」は「廃棄物」ではなく「有価物」と考えられます。

「有価物」となると廃棄物処理業の許可はもともと必要ありませんから、厳密に言うとこの場合の「古紙回収業者」さんは、「専ら業者」ではありません。

同様に「金属スクラップ」を有価で買い取るスクラップ業者さんも「専ら業者」ではありませんが、「逆有償」場合は「専ら業者」に該当します。

専ら業者とは、”排出事業者から無償または処理費用を徴収して、これら4品目を回収あるいは処分する”場合でも、処理業の許可(収集運搬業と処分業の両方とも)が不要であり、産廃に該当する専ら物についてはマニフェストの運用も不要であるということです。

専ら業者には”処理基準”が適用されない

業の許可を有する収集運搬業者と処分業者は、法定された処理基準(収集運搬基準・処分基準)に従わなければならないと規定されていますが、廃棄物処理法の条文では許可不要の専ら業者には適用されない事になっています(廃棄物処理法第7条第13項、法第14条第12項)。

そのため、例えば産廃の専ら物を収集運搬する専ら業者には、車両表示義務や書面備え付け義務はありません。

ただし、排出事業者自らが産業廃棄物を収集運搬又は処分をする場合は、法定された処理基準(収集運搬基準・処分基準)に従わなければならないと規定されていますので(廃棄物処理法第12条第1項)、例えば産廃に該当する専ら物を自社運搬する排出事業者には、専ら物に該当しない産廃を自社運搬する場合と同様に、車両表示義務や書面備え付け義務があります。

自社運搬についてはこちらを参照して下さい。
>>> 廃棄物の「自社運搬」は許可不要ですが・・・①

私は専ら業者になれますか?

「私は専ら業者になれますか?」という問い合わせを時々いただきます。

「処理業許可が不要となる特例を特定の事業者に与える」ということなのですが、その”特定の事業者”の具体的な中身を、政省令や施行規則から様々な解釈がなされることが、この専ら物の悩ましいところです。

上記の廃棄物処理法の条文や通知などから判断できるのは、この特例措置は「専ら4品目」に対してではなく、「専ら4品目を取り扱っている業者」に対して出されているということは異論がなさそうです。

そうすると廃棄物処理法第14条にある「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬・・・」の”のみ”という文言や、通知にある「古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は・・・」の”既存の”という文言が大変気になります。

例えば専ら4品目だけでなく、それ以外の廃棄物も処理業許可を取得して取り扱う業者は、専ら業者に該当しないのではとか、法律の公布時点ですでに営業していた専ら業者のみが対象であり、新規参入業者はこれにあたらないのではとか、いろいろな解釈ができます。

ガラ陶の産廃収集運搬業許可をもっている業者が、産廃に該当する「ガラスくず」を専ら物として扱ったり、混合廃棄物の取り扱いの関係で金属くずの産廃収集運搬業許可をもっている業者が、産廃に該当する「金属くず」を専ら物として扱ったりするというのは、それがマニフェストの運用の手間を省略したいがための行為であるとすれば、法の本来の主旨にそぐわない気がします。

逆に、繊維くずや廃プラスチック類の産廃収集運搬業許可をもっている業者が、一廃に該当する「古繊維(繊維くず)」を専ら物として扱うことは何ら問題はないように思えます。

私個人としては、専ら物のリサイクル率の向上とリサイクル事業への新規参入を促すために「専ら4品目であれば、”誰でも”処理業(収集運搬と処分)の許可を取得することなく、リサイクル事業に新規参入できる。」と解釈してよいのではと考えています。

現に環境省は、平成15年2月に「引越時に発生する廃棄物の取扱いについて」というマニュアルの中で、「引っ越し請負業者が不要となった書類等古紙を紙製品の原材料としてリサイクルするために回収する場合については、当該廃棄物を引き取ることは可能である。」と明記しています。

とは言いましても、自治体によって専ら物の取り扱いに温度差があることは確かですので、「私は専ら業者になれますか?」という問い合わせに対しては、ひととおり私見を述べた最後に、毎度毎度とっても便利な常套句を用いています。

「ただし自治体によって解釈に温度差があります。検討している廃棄物が一廃であれば市町村の廃棄物指導課に、産廃であれば都道府県の廃棄物指導課に必ず問い合わせてください。」

記事が長くなりましたので、続きはこちらを >>> ”専ら物”ってナニ?②

任せなさい「リスクを回避するために産業廃棄物収集運搬業許可を取得しておいた方がいいかな~」と思われた業者さんは、以下を参考にどうぞ。
>>> 許可取得までの流れ

他社の依頼を受けて産業廃棄物を運搬する場合は、『産業廃棄物収集運搬業許可』が必要です。

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手元マイナス(逆有償)の対応

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廃棄物を売る? 廃棄物を買う?

一般的に廃棄物は、それを排出したひとが処理費用を負担して他人に処理を任せますが、その廃棄物を買い取りそれを原料にしてある付加価値をつけて第三者に販売するという、リサイクル事業のビジネスモデルがあります。

今まで産廃処理費用として毎月2万円支出していたのに、「来月からは2,000円で買い取ります」という業者さんからのオッファ―があったとしたら、差し引き22,000円のプラス、そんなおいしい話しはありません。

手元マイナス(逆有償)とは、「一般的には廃棄物」と思われるものをリサイクル業者に買ってもらうという状況下で起こる事象なのですが、下の図で説明いたします。

「排出事業者A」の廃棄物を「購入企業C」が1,000円/kg円で購入しますが、Aが受け取る売却代金が、Aが「運送業者B」に支払う運送費1,500円/kg円を下回るため(又は同額)、全体として「排出事業者A」に500円/kgのコスト負担(又はプラスマイナス0)が生じる場合手元マイナス(逆有償)といいます。

手元マイナスの図

「排出事業者A」が自社では不要になったあるモノを第3者に販売した場合、「販売価格からこれに要した経費を差し引きして、1円以上の利益を出すことができない状態」が手元マイナス(逆有償)です。

手元マイナスの場合、排出物は有価物?廃棄物?

結論から言いますと、『手元マイナスの場合は、常に廃棄物とみなされるわけではないが、有価物であるという抗弁ができない限り、廃棄物として運用した方が安全である』となります。

環境省の通知では、次のように示されています。

●環境省の通知【平成25年3月29日付けの通知(環廃産発第 130329111号)】の抜粋
引渡し側が輸送費を負担し、当該輸送費が売却代金を上回る場合等当該産業廃棄物の引渡しに係る事業全体において引渡し側に経済的損失が生じている場合であっても、少なくとも、再生利用又はエネルギー源として利用するために有償で譲り受ける者が占有者となった時点以降については、廃棄物に該当しないと判断しても差し支えないこと。

通知の全文はこちら ↓↓↓
「エネルギー分野における規制・制度改革に係る方針」(平成24年4月3日 閣議決定)において平成24年度に講ずることとされた措置(廃棄物処理法の適用関係)について

正直思わず「うーん」と唸ってしまう、わかったようでわからない通知の内容ですが、これを冒頭の図にあてはめてもう少しわかりやすく表現すると以下のようになります。

●環境省の通知【平成25年3月29日付けの通知(環廃産発第 130329111号)】の解釈

  • 「排出事業者A」がたとえ500円/kgの手元マイナス状態であっても、「マテリアルリサイクルまたはサーマルリサイクルを目的に排出物を購入する企業C」に到着してから以後は、「廃棄物に該当しない」のでCの処分業許可は不要である。
  • Cの処分業許可不要というのは、CがAから1,000円/kgで購入(有償、対価を支払って)することが条件で、「タダ(0円)」や「料金を徴収して(処理費用をもらって)」は認められない。
  • 「排出事業者A」が手元マイナス状態の場合、運搬の委託を受けた「運搬業者B」は収集運搬業許可がほとんどのケースで必要である(ほとんどの場合、廃棄物とみなされる)
  • 「排出事業者A」が手元マイナス状態の場合でも、運搬の委託を受けた「運搬業者B」は収集運搬業許可が不要な場合がある(有価物とみなされる場合もある)
  • 「廃棄物」か「有価物」かの判断は、『総合判断説』に基づいて行われること。

こちらの関連記事もどうぞ >>> リサイクル事業に許可は必要?

(手元マイナス)=(廃棄物)とは限らなし、 (手元プラス)=(有価物)とも限らない

手元マイナスの場合であっても、(手元マイナス)=(廃棄物)と言い切ってはいないところが実はポイントなのです。

総合判断説によれば、「取引価格の有無」は有価物か廃棄物かの判断をする判断基準のひとつにすぎないので、「手元マイナスなら廃棄物、手元プラスなら有価物」と一元的に決めつけるのではなく、廃棄物処理法を適用するか否かは、最終的には「総合判断説」に則って判断してくださいといっています。

逆を返せば、明らかに手元プラスの状態で販売したものでも、売却先の取扱い状況が悪く、不法投棄や汚染の発生などがあった場合、有価で販売したものであっても廃棄物であると判断される可能性があるということになります。

有価で販売されたものが、どのような企業にどんな状況で取り扱われているかを確認するために、一年に一度ぐらいは現地を訪問する手間は惜しまないほうがよいかもしれません。

いずれにしても、手元マイナス(逆有償)になっている場合、有価物だと抗弁できる材料がない以上は、産業廃棄物として運用する(収集運搬業許可を有するBに運搬委託する)必要があります。

「総合判断説」の詳細はこちら >>> 廃棄物と有価物の境い目は?

手元マイナスの場合で廃棄物と判断された時の運用

ポイント

  1. 収集運搬業者Bは、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要
  2. 排出事業者Aは、収集運搬業者Bと処理委託契約締結が必要
  3. 排出物購入企業Cは、産業廃棄物処理業の許可は不要
  4. 排出事業者Aと排出物購入企業Cの処理委託契約は不要 (売買契約が必要
  5. マニフェストの運用は、収集運搬業者Bが排出物購入企業Cに排出物を渡すまでなのでA、B1、B2票の3枚のみ必要
  6. 処分受託者は存在しないので「処分受託者」欄には斜線を引くか、「売却先」として売却先の会社名Cを記入

間違った運用の事例 >>> リサイクル偽装の裏側には何がある

任せなさい「リスクを回避するために産業廃棄物収集運搬業許可を取得しておいた方がいいかな~」と思われた業者さんは、以下を参考にどうぞ。
>>> 許可取得までの流れ

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廃棄物と有価物の境い目は③

>>> このコラムは廃棄物と有価物の境い目は②の続きです。

【3】有名な判例の紹介

有価物と判断するか廃棄物と判断するかで争われた裁判で、かつ環境省の通達などにも影響を与えたと言われている有名な判例をふたつ紹介いたします。

ただし、この判例から「有価物と廃棄物の境い目は?」の疑問はクリアになりません。

結局のところ、有価物であると主張するためには、『第三者に対し、総合判断説の5条件について自信を持って説明できるエビデンスを準備すること』に尽きるのではないかと思います。

自信が持てないのであれば、「廃棄物」として運用するしかありません。

●おから裁判 (最高裁第二小法廷平成11年3月10日決定)
総合判断説を認めた有名な判決がこのおから裁判です。

《事件の概要》
処分業許可を持たない飼料会社が、料金を受け取っておからを回収し、それを加工して飼料として販売していた。
廃棄物処理法の無許可営業で、飼料会社が起訴された。

《結果》
おからは「廃棄物である」と結論づけ、飼料会社は有罪となった。

《判決の主旨》
客観的性状、排出状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無、事業者の意思等を総合判断してこの場合のおからは産業廃棄物に該当する。
おからは非常に腐敗しやすく、社会的価値が下がる。
通常は無償で牧畜業者等に引き渡されるか廃棄物とみなされ処理がなされている。

●水戸木くず事件 地裁判決 (水戸地裁平成16年1月26日判決)
排出事業者側が手元マイナス(処理費用を支払っている)にもかかわらず、全体としては取引価値が認められるので廃棄物に該当しないという、従来の廃棄物処理法の解釈とは異なる驚きの判決です。

《事件の概要》
建設廃材等の木くずを料金を受け取って受け入れて、処分業許可を受けずに木材チップを製造・販売していた事業者が、廃棄物処理法の無許可営業で起訴された。

略式裁判で水戸簡裁から罰金50万円の略式命令が出たが、チップ加工会社はこれを拒否して争われた。

《結果》
従来の廃棄物処理法の解釈とは異なり、木くずは「廃棄物ではない」と結論づけた。
この地裁の無罪判決は控訴されず、チップ加工会社の無罪が確定した。

《判決の主旨》
木くずが「有償譲渡(料金を取って回収している)」されているからと言って、すぐに「廃棄物」とはならない。

排出事業者にとっては産廃処理費用が安くなり、チップ加工会社にとってはチップの売却費が得られるという、双方にとって利益があるということで、排出事業者側が処理料金を支払っているにもかかわらず取引価値が認められため、木くずは廃棄物ではないとされた。 

●水戸木くず事件 再審高裁判決 (東京高裁平成20年4月24日判決)
排出事業者としては、「えーーー!」という判決です。
リサイクル事業が「製造業」と認められれば、廃棄物処理法の規制は及ばないという判決は画期的ですが、「私どもがやっているリサイクル事業は、製造業です」とどのように証明したらよいのでしょうか。
廃棄物か有価物かの判断をますます難しくしてしまったのではと思います。

《事件の概要》
チップ加工会社の無許可営業が無罪とされた水戸地裁の判決を受けて、すでに無許可業者に産廃の処理を委託したとして(廃棄物処理法の委託基準違反)、略式命令による罰金刑が確定していた排出事業者が、再審請求を行なった。

《結果》
水戸地裁の判決では「廃棄物にはあたらない」とされた木くずが、今度は「廃棄物である」とされ、改めて排出者の有罪が確認された。

《判決の主旨》
リサイクル事業が廃棄物処理法の規制を受けないとするならば、継続性、製造事業として確立している必要がある。

このチップ加工会社は受入量、管理体制、事業計画などから製造事業としての確立はないと判断された。

【4】有価物にも規制がかかります

『雑品スクラップ保管等届出制度』について

2018年4月1日より、『有害使用済機器(雑品スクラップ)保管等届出制度』が施行されました。

ここでいう『雑品スクラップ』とは、廃棄物でなく、かつ製品リユースもされない家庭用電気・電子機器32品目のことで、回収した雑品スクラップをスクラップヤードで保管したり破砕などの処理を業として行なう場合、処理業許可業者などを除き、都道府県知事・政令市長に対し、事前に届出することが義務付けされました。

有価で回収したパソコンを解体し、基板、ハードディスク、電源など比較的価値の高い部品を中古市場に販売する場合、回収したパソコンは多くの場合「有価物である」と判断されてきました。

『雑品スクラップ』が有価物であるがうえに、廃棄物処理法に基づく規制を受けずにスクラップヤード等で環境保全上不適切に取り扱われ、火災や有害物質の漏えい等、生活環境上の支障を生じることが懸念されるということが今回の法規制の背景です。

廃棄物処理法は制定以来「廃棄物」のみにフォーカスして今日に至っていますが、はじめて「有価物」に焦点をあてたという意味では画期的と言えるかもしれません。

『有害使用済機器(雑品スクラップ)保管等届出制度』の詳細はこちらから
>>> 雑品スクラップ保管等届出制度

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廃棄物と有価物の境い目は②

>>> このコラムは廃棄物と有価物の境い目は?①の続きです。

【2】「総合判断説」の正しい使い方

「総合判断説」5つのポイント
 ※ただし明確な判断基準がありません

「総合判断説」とはその名のとおり、ある物が廃棄物なのか有価物かは、次の5つの観点に照らし合わせて総合的に判断するというルールのことです。

ただし残念なことに、「ひとつのポイントあたり20点で合計が100点、70点以上なら有価物と判断して差し支えない。」というような明確な判断基準が存在しません。

「総合判断説」の5つのポイント

  1. (物の性状)
    利用用途の要求品質を満足し、生活環境保全上の支障が生じるおそれがない
  2. (排出の状況)
    需要に沿って定期的に排出される
  3. (通常の取引形態)
    製品としての市場が形成されおり、通常は廃棄物として処理されていない
  4. (取引価格の有無)
    有償譲渡されており、処理費を徴収していない
  5. (占有者の意思)
    排出事業者が適切に利用できる有価物だと思っており、有償譲渡する意思がある

1から5までのポイント全てにチェックが入らなければ有価物とは認められないとか、ひとつでもチェックがはいれば有価物として認められるというようなものではなく、あくまでも5項目全体を総合的に判断するということなので、判断する人によって結論が異なる可能性が大です。

明確な判断基準がないので、自分は有価物と判断したけれども、行政には廃棄物と判断されるリスクもありますから、ジャッジを任された人はそれはそれは大変です。

有価物か廃棄物かのジャッジを任された場合、社会通念上明らかに無理がある判断といわれることのないように、判断の手順と大事なポイントを考察したいと思います。

まずは『物の性状』をチェックする

平成25年3月に環境省から出された「行政処分の指針について」の通知の「廃棄物該当性の判断」という項目に、次のような記述があります。

(2) 廃棄物該当性の判断について(環廃産発第 1303299号 平成25年3月29日)

 廃棄物とは、占有者が自ら利用し(※)、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものであること。
 廃棄物は、不要であるために占有者の自由な処理に任せるとぞんざいに扱われるおそれがあり、生活環境の保全上の支障を生じる可能性を常に有していることから、法による適切な管理下に置くことが必要であること。

(※)占有者が自ら利用するということ(「自ら利用」)
排出者が自己の生産工程に投入して原材料として使用する場合を除き、他人に有償で売却できる性状のものを占有者自身が利用することをいいます。
占有者が自分で利用する場合は、すべてが有価物に該当するということではありません。

後半部分に着目すると、「生活環境保全上、支障をきたすものは廃棄物該当性が高い。」と読み取ることができます。

すると不要となった『物の性状』が「有害性のある物」「悪臭がする物」などのネガティブ要因を含んでいた場合、その物は廃棄物該当性が高いと考えても異論はないと思われます。

総合判断説の5つのポイントにウエイト付けをするとしたら、一番目にやることは対象物がネガティブ要因を含んでいるかいないかをチェックすることであると考えてよいと思います。

次に『取引価格の有無』をチェックする

上記の「行政処分の指針」に戻りますが、「廃棄物は、不要であるためにぞんざいに扱われるおそれがある」と言ってます。

必要でないものをわざわざお金を出して買うはずはないので、1円以上出して買ったものは当然自分には必要なものでしょうから、購入した時点で「ぞんざいに扱うおそれ」はなくなるはずですから、廃棄物該当性は低いと考えても異論はないと思われます。

これとは逆に「処理費用をもらって」物を回収した場合は、その回収物を「ぞんざいに扱うおそれ(例えば処理費用だけ懐に入れて、回収物は河川敷に不法投棄する)」は大きいと言えますから、廃棄物該当性は限りなく高いと考えられます。

総合判断説の5つのポイントで二番目にやることは、不要となったものの『取引価格の有無』をチェックすることですが、この際に注意が必要なのは、『手元マイナス(逆有償)』のケースです。

例えば排出事業者(A)が、加工業者(C)から「排出物(W)を工場に持ってきてくれるなら継続的に購入しますよ」というオファーをもらったとします。

排出事業者(A)が排出物(W)を加工業者(C)の工場までの運送料を経費として販売価格から差し引いても、きちんと売買利益を得られたとしたら、これはれっきとした有償譲渡ですから問題ないのですが、加工業者(C)が遠方にあるためで運送料が高くついてしまい、販売価格から運送料を経費として差し引いたら利益がマイナスかまたはトントンになってしまうことがあります。
送料別途2
このような状態を『手元マイナス(逆有償)』といいます。

利益がマイナスということは、「処理料金を払って排出物(W)を引き取ってもらっているのと同じ」と考えられますから、これは廃棄物と考えても矛盾しませんし、これを有価物と抗弁するには、他に理由が必要になります。

『手元マイナス(逆有償)』をもう少し詳しく >>> 手元マイナス(逆有償)の対応

それでも判断がつかない場合は

『物の性状』と『取引価格の有無』の両方がクリアできれば、有価物該当性が極めて高くなるといってよいと思います。

しかし、それでも判断がつかない場合は「排出の状況」「通常の取扱い形態」「占有者の意思」を補足的に使用して、それこそ総合的に判断するしかありません。

最終的に有価物であると判断した場合、有価物該当性を対外的に(例えば行政に)それを証明できるような「売買契約書」や「品質管理基準」などのエビデンスが必要になりますが、それを実現するのが困難な場合は、初めから「廃棄物」として運用すべきでしょう。

そして、有価物か廃棄物かの判断は自治体によって判断が異なることがありますので、判断に迷う場合は運用の前に所管自治体に確認することが必要です。

現実的なことを申し上げれば、『物の性状』と『取引価格の有無』の両方がクリアできれば、残りの3要素が極端に悪くなければ、有価物と判断されているといえます。

『有価物抗弁の棚卸』をしてみる

前述しました環境省が平成25年3月29日に発出した「行政処分の指針について」という通知の中に、廃棄物の脱法的な処理と判断される場合は、いたずらに行政指導を繰り返すだけでなく、躊躇せず行政処分を下し、当該違反行為が犯罪行為に当たる場合は、捜査機関と十分に連携を図ることという要旨の記述があります。

そして、通知の中の廃棄物該当性にかかる部分では、安易に「有価物抗弁」を認めてはいけないという主旨の記述があります。

(2) 廃棄物該当性の判断について(環廃産発第 1303299号 平成25年3月29日)

(前半略)なお、占有者と取引の相手方の間における有償譲渡の実績や有償譲渡契約の有無は、廃棄物に該当するか否かを判断する上での一つの簡便な基準に過ぎず、廃プラスチック類、がれき類、木くず、廃タイヤ、廃パチンコ台、堆肥(汚泥、動植物性残さ、家畜のふん尿等を中間処理(堆肥化)した物)、建設汚泥処理物(建設汚泥を中間処理した改良土等と称する物)等、場合によっては必ずしも市場の形成が明らかでない物については、法の規制を免れるため、恣意的に有償譲渡を装う場合等も見られることから、当事者間の有償譲渡契約等の存在をもって直ちに有価物と判断することなく、(略)

行政から「あなたの排出しているもの、回収保管しているものは廃棄物では?」と問われた時に、「総合判断説」に基づいた明快な説明と証明が必要です。

『取引価格の有無』のみや『占有者の意思』だけをことさら主張するだけでは、改善命令や措置命令の対象となるので、自社で扱っている有価物について、きちんと「有価物抗弁の棚卸」をする必要があります。

有価物と主張していたものが、「それはどう見ても廃棄物でしょう」と判断されたら大変です。

廃棄物処理業許可(収集運搬、処分)が無い場合は、無許可営業となり重い罰則が待っています。

コラムの記事が長くなりましたので、総合判断説に関連した裁判の判例については、こちらをどうぞ。 >>> 廃棄物と有価物の境い目は③

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>>> 許可取得までの流れ

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廃棄物と有価物の境い目は①

トップページ見出し2

【1】「これは有価物だ!」と主張するには

廃棄物の定義

「廃棄物」は、『占有者自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要になったもの』をいいますが、廃棄物処理法では、次のとおり定義されています。   

●廃棄物の定義(廃棄物処理法第2条第1項)
「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体、その他の汚物または不要物であって、固形状または液状のものをいう。

●廃棄物処理法の対象外(環境省通知 環整第43号)

    漁師さん2
  • 気体
  • 放射性物質及びこれによって汚染された物
    ※自己由来によって放射性物質に汚染されたもののうち、汚染レベルが8,000ベクレル以下のものは対象になる。
  • 港湾・河川等の浚渫(しゅんせつ)に伴って生じる土砂その他これに類するもの
  • 漁業活動に伴って漁網にかかった水産動植物等であって、漁業活動を行なった現場付近において排出したもの
  • 土砂および専ら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの

廃棄物処理法は固形状および液状の廃棄物に対しての規制であり、気体については適用されません。

また、放射性物質で汚染された廃棄物も廃棄物処理法は適用されず、平成24年1月1日に全面施行された「放射性物質汚染対処特措法」(※)によって規制されています。 

(※)正式名称:「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」

有価物と廃棄物の境界線は?

廃棄物と有価物の境目は?

廃品回収車 (2)有価物は、その字のとおり「他人に買い取ってもらえるような価値の有る物」と定義されます。

有価物と判断された時点で、原則としては廃棄物処理法の適用外ですから、処理業(収集運搬業と処分業)の許可や委託契約書、マニフェストの運用も不要になるので、取り扱っているものが廃棄物ではなく、有価物と判断される場合は非常に大きなメリットがあります。

この有価物のメリットを享受したいがために「恣意的に廃棄物を有価物として取り扱うこと」は、まさに脱法行為です。

ところが、有価物なのか廃棄物なのかの判定は、ポジティブリストに照らし合わせて判断するというような簡単なものではないので、恣意的でないにもかかわらず、知らないうちに廃棄物処理法に違反していたということが多々ある訳です。

廃棄物処理法では、廃棄物であるか有価物であるかは、「総合判断説」といわれるルールに則って「有価物該当性」を判断することとされています。

「判断要素はわかったけど、具体的な判断基準ないの?」と大半の方は思われるでしょうが、残念ながら法律は「総合判断説」を用いて有価物該当性を自らが適切に判断しなさいと言っています。

「総合判断説」を用いて”有価物該当性”を検討する

環境省は「行政処分の指針」で、有価物該当性の判断基準を下記の5項目について具体例を挙げて説明しています。

この5つの判断基準を「総合判断説」と呼んでいます。

判断項目 具体例
物の性状
  • 利用用途に要求される品質を
    満足
    し、かつ飛散、流出、
    悪臭の発生等の生活環境の
    保全上の支障が発生する
    おそれのない
    ものであること
  • 実際の判断に当たっては、
    生活環境の保全に係る関連
    基準(例えば土壌の汚染に
    係る環境基準等)を満足すること
  • その性状についてJIS規格
    等の一般に認められている
    客観的な基準が存在する場合
    は、これに適合していること
  • 十分な品質管理がなされて
    いること
排出の状況
  • 排出が需要に沿った計画的な
    もの
    であり、排出前や排出
    時に適切な保管や品質管理が
    なされていること
通常の取扱い形態
  • 製品としての市場が形成
    されており、廃棄物として
    処理されている事例が通常は
    認められないこと
取引価格の有無
  • 占有者と取引の相手方の間で
    有償譲渡がなされており、
    なおかつ客観的に見て当該
    取引に経済的合理性があること
  • 取引の相手方は名目を問わず処理料金に
    相当する金品の受領がないこと
  • 譲渡価格が競合する製品や
    運送費等の諸経費を勘案して
    も双方にとって営利活動とし
    て合理的な額であること
  • 当該有償譲渡の相手方以外の
    者に対する有償譲渡の実績
    あること
占有者の意思
  • 客観的要素から社会通念上
    合理的に認定し得る占有者の
    意思として、適切に利用し
    若しくは他人に有償譲渡する
    意思が認められること
  • 放置若しくは処分の意思が
    認められない
    こと
  • 単に占有者において自ら
    利用し、又は他人に有償で
    譲渡することができるもので
    あると認識しているか否かは
    廃棄物に該当するか否かを
    判断する際の決定的な
    要素とはならない
  • 上記1から4までの各種判断
    要素の基準に照らし、適切な
    利用を行おうとする意思が
    あるとは判断されない場合、
    又は主として廃棄物の脱法
    的な処理を目的としたものと
    判断される場合には、
    占有者の主張する意思の
    内容によらず、廃棄物に該当
    する

残念ながらこの表の内容を一読しただけでは、何のことやらピンときませんので、次に要旨のみをピックアップしてみました。

有価物として判断するための必要条件は

  • 「自分が排出したものは、有価物である(排出した時点では)。」
  • 「自分が回収保管したものは、有価物である(収集運搬や保管した時点では)。」
  • 「廃棄物をリサイクルしたものは、有価物である(製品として作り上げた時点では)。」

と主張することを「有価物抗弁」といいます。

「有価物抗弁」をするためには、『総合判断説』のポイントをおさえておく必要があります。

原則は、社会通念上無理のない「有価物抗弁」であり、「一般的に考えて???」となる場合は、廃棄物として運用する必要があります。

ポイント●有価物抗弁のための必要条件

  1. (物の性状)
    利用用途の要求品質を満足し、生活環境保全上の支障が生じるおそれがない
  2. (排出の状況)
    需要に沿って定期的に排出される
  3. (通常の取引形態)
    製品としての市場が形成されおり、通常は廃棄物として処理されていない
  4. (取引価格の有無)
    有償譲渡されており、処理費を徴収していない
  5. (占有者の意思)
    排出事業者が適切に利用できる有価物だと思っており、有償譲渡する意思がある

総合判断説は具体的な判断基準が明確でないので、有価物と判断した理由を説明する際に、上記の1から5までの内容について担保できるエビデンスが必要だということです。

具体的には、対外的にそれを証明できるように「売買契約書」と「品質管理基準」などをきちんと作成し、継続的な売買取引をしている証拠を残すことです。

それを実現するのが大変な場合は、初めから「廃棄物」として運用したほうが賢明かもしれません。

【閑話休題】 これはもう立派な脱法行為です

●買ってもらえる物は何でも有価物だ!
日々の電話相談では、廃棄物か有価物かの判断についてのお問合せもいただきます。

昔から「とにかく1円でもいいから買ってもらったものは廃棄物ではない」という慣習がありますから、取引価格の有無だけで有価物かそうでないかを判断されている相談者が多いように思います。

売買契約書や領収書だけで判断すると確かに「売却している」のですが、違うファイルに綴じてある運送会社からの請求書にある運送費を差し引いたら見事に赤でしたという「逆有償」の話しも出てきます。

ついうっかりならまだしも、監査に引っかからないように巧妙に伝票を操作していたら、これはもう確信犯、立派な脱法行為です。

●相殺してなぜ悪い!
わりと良い値段で買い取ってもらえる有価物と処理費用を支払う必要のある廃棄物を、同じ業者さんに同時に引き取ってもらい、「相殺して全体を有価物として」伝票を切ってしまう行為があります。

「廃棄物と有価物を混ぜたら、混合廃棄物ではなく混合有価物だ。」という主張もわからないではないのですが、廃棄物処理法の主旨を真っ向から否定する行為であり立派な脱法行為ですから、心当たりのある事業者さんは今日から改善をしてください。

何かトラブルが起きてこの事実が明るみに出た時のことを考えると、私が事業所の廃棄物担当者だったらおそろしくて夜も眠れません。

ちなみに、有価物と廃棄物を混ざらないように区別した状態で同じトラックに載せて運んでもらうことは全く問題ないのですが、廃棄物についてはマニフェストをきちんと運用する必要があります。

『総合判断説』の基本的な部分をみてきましたが、コラムの記事が長くなりましたので、総合判断説の応用方法については、こちらのコラムでどうぞ。 >>> 廃棄物と有価物の境い目は②

任せなさい「リスクを回避するために産業廃棄物収集運搬業許可を取得しておいた方がいいかな~」と思われた業者さんは、以下を参考にどうぞ。
>>> 許可取得までの流れ

他社の依頼を受けて産業廃棄物を運搬する場合は、『産業廃棄物収集運搬業許可』が必要です。

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