誰が排出事業者?
廃棄物処理法では、「この法律でいう排出事業者とは、・・・・」というような定義づけをしていませんが、法第3条第1項で次のように規定しています。
●廃棄物処理法第3条第1項 |
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一般家庭から生じる廃棄物(すべて一般廃棄物)を考えた場合、「排出事業者は、有価物時代の最後の所有者」と定義してもあながち間違いではなさそうですが、産業廃棄物の場合はこれをそのまま引用しただけでは判断に迷うことがあります。
そこで産業廃棄物の排出事業者が誰かを考える場合、通常以下の判断基準を用います。
●産業廃棄物の排出事業者はキミだ!
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廃棄物をめぐって複数の当事者が関係する場合の例を以下に取り上げ考察してみますが、基本は上記のとおり『ひとくくりの仕事を支配している会社が排出事業者』と考えてみるとわかりやすいと思います。
Q.ビルのメンテナンスに伴って排出されるワックスの剥離廃液・廃部品・廃油などの排出事業者は、メンテナンス業者ですか、それともビル所有者・管理者ですか?
ビルの設備のメンテナンスが建設工事に該当する場合は、排出事業者はその工事の元請業者になることが法律で定められています。
これに対して建設工事に該当しないメンテナンスについては、『産廃を発生させたメンテナンス業者』又は『ビル・設備の所有者・管理者』のいずれかが排出事業者となりえますが、残念ながら法定されていないため大いに迷うところです。
すでに廃止となったのですが、参考になると思われるのが次の通知です。
●清掃後の産業廃棄物(昭和57年6月14日 環産第21号から抜粋) |
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『適正な処理・リサイクルができる者が排出事業者になるほうが合理的』 という観点から考えると、メンテナンス作業が大掛かりな場合は「メンテナンス業者」が、メンテナンスが清掃・整理・保管に類する作業の場合は「所有者・管理者」が排出事業者になることが合理的ではないかと考えます。
清掃作業を「清掃する前から事業場に発生していた産業廃棄物を一定の場所に集中させる行為」と定義していますので、明らかに清掃・整理・保管に類する作業の場合は、あまり悩まなくて済みそうです。
それでは、大掛かりなメンテナンス作業と大掛かりでないメンテナンス作業の境い目は?と聞かれると、これがまた非常に悩ましいところです。
商習慣があればそれに従うことも間違いではありませんが、このグレーゾーンについては、後々無用なトラブルを起こさないためにもメンテナンス契約の時点で産業廃棄物の排出事業者責任の所在及び費用負担についてあらかじめ定めておくことが必要です。
ただし、上記の通達にあるとおり、廃水処理に伴って生じる『汚泥』については、この排水処理設備を設置している事業者が排出事業者であると明確に示されていますので、いくらメンテナンス契約の中に「メンテナンス業者が排出事業者になる」としたところで、メンテナンス業者が汚泥の産業廃棄物収集運搬業許可なしで運ぶことはできません。
Q.植木屋を営んでいます。剪定した枝木や刈草は私が出した廃棄物として扱って問題ないですか?
私の事務所がある神奈川県横浜市では植木屋さんが排出事業者と判断していますから問題ありません。
ところがこの判断は、一般廃棄物を管轄する各市町村によって見解が異なるので、必ず各市町村の廃棄物指導課に電話を入れて個々に確認が必要です。
横浜市一般廃棄物指導課では「枝木を剪定した時点で、剪定された枝木は植木屋さんのもの」と定義していますので、植木屋さんは自社運搬として一般廃棄物収集運搬業許可がなくても、横浜市の焼却工場(事前に搬入届の提出は必要)や木くずのリサイクル工場に持ち込むことが可能です。
Q.テナントビルの各テナントからでる廃棄物は、ビル管理会社が排出事業者?
テナントから排出される廃棄物は、各テナントが排出事業者になります。
よって、処理委託契約書は各テナントが、収集運搬業者及び処理業者とそれぞれ直接締結するのが基本です。
ただし、日常的なマニフェストの交付事務は、ビル管理業者に業務委託することができます。
廃棄物処理法では、代理人による処理委託契約書の締結を禁止しているわけではないので、ビル管理会社がテナントの代理人となって収集運搬業者や処理業者と契約を結ぶことは可能です(委任状の交付は必要)。
ただし、あくまでも排出者責任は本人であるテナントになりますし、契約書の不備による責任もテナントに及びますので、十分に信頼のおけるビル管理会社であることが要求されます。
Q.食品メーカーから委託を受けて倉庫業を営んでいる場合、賞味期限切れなどによって生じる廃棄物は、倉庫業者に排出責任がありますか?
倉庫の商品の所有権と廃棄の判断をする権限は、食品メーカーにあると考えられるからです。
倉庫業者が単なる保管業務だけでなく、梱包や発送代行などの業務を請け負っており、その業務によって排出された廃棄物については、倉庫業者が排出事業者となると考えてよいでしょう。
OEMなどの製造委託先から生じる廃棄物も、たとえ原材料等を発注元から支給されていたとしても、その製造の管理をしている製造委託先が排出事業者となると考えてよいでしょう。
排出事業者が誰であるかが決まらないと、マニフェストを交付する責任が誰にあるかも決まりません。
判断に迷う場合には、排出責任者となるものを当事者間の契約書で明確に取決めすることが必要です。
Q.住宅の解体工事を孫請けの立場で請け負いました。下請業者と委託契約を締結して建設廃棄物を収集運搬していますが、問題ないですか?
このケースの場合、すでに委託基準違反の状態になっています。
産業廃棄物の『排出事業者』とは、ひとつの例外を除けば「排出物が有価物であった時の最後の占有者」と定義づけてよいと思います。
ひとつの例外とは、『建設工事の建設廃棄物』です。
廃棄物処理法第21条の3第1項に「建設工事の建設廃棄物の処理責任は、元請業者にある」と定めらており、建設工事を発注した注文主でもなければ、下請業者でもありません。
下請代金は、元請業者 → 下請業者 → 孫請業者というフローになりますが、孫請業者が建設廃棄物を収集運搬する場合、委託契約書の相手方は下請業者ではなく排出事業者である元請業者となり、元請業者から委託を受けて産廃を収集運搬することになります。
当然、マニフェストは元請業者が交付することになります。
建設業関連の詳細はこちら >>> 建設業者さん必見!収集運搬許可が必要なのは誰?
Q.一般住宅の解体工事を請け負った際、建物の所有者から不要となったタンスもいっしょに処理してほしいと言われたのですが、引受けて問題ないですか?
この場合のタンスのように解体家屋に残された建物所有者の所有物を「残置物」といいます。
『残置物の排出事業者(排出者)= 建物の所有者』となりますから、残置物の処分責任はあくまでも建物の所有者であり、解体工事の元請業者が排出責任者となる建設廃棄物とは取扱いが異なります。
一般住宅から出てくる残置物はすべて『一般廃棄物』ですので、解体業者さんが産業廃棄物収集運搬業許可を持っていても無許可営業になりますから、これらを安易に収集運搬することはできません。
残置物の取り扱いについては、解体工事の契約時点で、「いついつまでに残置物を所有者の責任で処分する」ということをしっかり確認する必要があります。
少量だからといって「残置物を大量の建設廃棄物(産業廃棄物)に紛れ込ませて運んでしまう」という行為は、廃棄物処理法違反にあたる可能性がありますので注意が必要です。
Q.自動販売機に備え付けられた回収ボックスで回収された飲料容器は誰が排出事業者になりますか?
自動販売機を設置している土地・建物の所有者とベンダー(飲料製造業者、販売業者)の間で交わす当初の契約に、どちらが排出事業者になるかをあらかじめ取り決めることが必要です。
Q.同一敷地内に複数のグループ企業がある場合、グループ全体として排出事業者になれますか?
なれません。
排出責任は、個々の独立した法人にあるとするのが法律の考え方ですから、たとえ親会社と子会社が同じ敷地内にあったとしても、法人格が異なれば産業廃棄物の処理に係る委託契約は、個々のグループ企業の名義において行われなければなりません。
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